また、メーカー同士たがいにその特長を差別化しようとして、意識的にすこし違う色に設計してメーカーの個性をつくる場合もあります。ただし、絵具メーカーが個性を出すといっても、その色の名前がもつ一般的なイメージから逸脱するような大胆な差別化はしないのが常識になっています。
ただし、絵具の硬さとか、顔料の濃度とか、乾燥の早さなどの絵具としての属性がすこし異なっているもの同士を混ぜる場合には、お互いの属性が互いに影響しあうので、それを充分考慮にいれておくとよいでしょう。
アクリル絵具と同じような水性絵具で、酢酸ビニル絵具というものがありますが、これとアクリル絵具は同じ水性でも混合できません。
質の悪い絵具というのは、粗悪な原料を使っていたり、必要以上の体質顔料を使っていたり、製造工程に手を抜いたような絵具をいいます。こうした絵具は、発色に満足がいかなかったり、できあがった作品の保存性に問題があったりと、なにかと歓迎できない不愉快さをもたらします。 道具、特に筆の場合、値段と質は比例する事は多いもので、安かろう悪かろうの筆では思うように描けないこともあります。ただし、当りはずれというものもあるもので、評判の高価な筆がそれほどよくない、安い筆がたまたま使いやすくてひろいものをした、などという事もあります。よい道具にめぐりあったら、大事にながく使うようにしましょう。
しかし、近年は急速に品質が向上してきて、国産物に追いつく日もそう遠くないことが予見できます。価格もいつまで安いのかも、気になるところです。
ヨーロッパブランド品でも、実はmade in chinaであるという実例もあるのです。
バインダー自体にも耐光性の強弱はありますが、やはり顔料の耐光性が重要視されます。耐光性は絵具メーカー各社それぞれ独自の表記の方法をとっています。クサカベでは5段階にわけて、星のマークの数で識別表示しています。星の数が多いほど、光で変色しなくなる、とお考えください。なお、水彩絵具の場合は、最高位の耐光性をもつものは、星五つではなく「高耐光性」の文字で表記しています。 さて、色材には耐光性の他にもいろいろな「耐〜性」があります。これらをひとつひとつ表示するのはたいへんなので、ひとつにまとめ、その傾向をあらわしたのが「堅牢性」です。何に対して堅牢なのかそうでないのかまではわかりませんが、絵具としての信頼性をおおまかに評価する目安になります。
これらの情報について、各絵具メーカーの発信のしかたはまちまちで、ほとんど表示していないメーカーもあります。統一されない情報は混乱しやすいのですが、規格がないのが現状です。 これらの情報は、メーカーが持っている知見に基づいて、情報作成の時点で正確であると信じて提供されているものですが、その絶対性や信頼性を保証するものではありません。 実験によっては情報とやや異なる堅牢性が示される場合もあります。 情報が有効な効果に結びつくためには、使用者も適正な使用方法や、作品の保存方法に気を遣う必要があります。
さて、絵具の急性毒性ですが、実は非常に低いのです。カドミウム顔料は一般に毒性のある顔料と考えられていて、絵具のチューブにも有害性があることを示すアイコンが表示されていますが、実際のLD50の値は5000mg/kg以上なのです。つまり、有害性がある物質とはいえません。絵具は有害性の低い物質なのです。これは、顔料は水に不溶の物質であり、体内に吸収されないため、と考えられます。
では、なぜ有害の表示がしてあるかというと、万一の場合を考えての用心のためです。万一、絵具に欠陥があって吸収性の有害性物質が、健康に重大なダメージを与えた場合、メーカーには損害を賠償しなければならない責任があります。その事前対応策としての表示です。
したがって、絵具の有害性については実際上、ほとんど無視できるレベルです。取り扱いについては、ごく普通の衛生的配慮、つまり、みだりに体内に摂取しない、作業が終わったら手の汚れを洗い流す、といった程度で充分です。それと、みだりに環境中に排出しないことをこころがければよいでしょう。使い終わった絵具のチューブや絵具カスは、燃えないゴミとして扱ってください。
さて、油絵具は乾く過程で、ごく微量のガスを出します。この微量の揮発性物質が問題になる特殊なケースがあります。シックハウスの対象物質であるホルムアルデヒドが、ごく微量ですが発生します。いったんシックハウスになってしまった人にとっては、油絵具を描くことはもちろん、油絵を部屋にかけても、つらい症状をひきおこすことが考えられます。住空間が密閉型になり、環境のあちこちにいろいろな化学物質があふれる現代特有の問題です。
見ただけではほとんど違いがわからず、実際に使ってみてはじめてその違いに気づく色もあります。何種類かあるブラックなどはその例です。
絵具には「底色」というものがあります。これは、絵具をごく薄く塗ったとき、白と混合したときに明らかになります。生で塗った色が同じでも、白を加えたトーンが、がらりと違った印象になれば、「底色」が違うということになります。いわば、色の隠し味です。見本で同じ色に見えていても、「底色」はそれぞれ異なっています。
また、「着色力」「隠蔽力」も、見本ではわかりずらく、使ってはじめてわかる色の個性要素です。
最終的には、人間の感覚を重要視するのです。
「にごる」というのは、彩度が低下するという意味とほぼ同じです。ただし、色彩的な不調和感とでもいう感覚的な要素を多分に含んだ彩度の低下です。混色をすると、たいていは彩度が下がります。補色の要素を含んだ混色では、特にそうです。こうした補色の組合せは、わざと彩度を落とした効果をねらって行われることが多く、いちがいに否定されるものではありません。
また、白との混色も彩度を落とします。白と黒の混合が無彩灰色であるのに対して、白と有彩色との混合は有彩灰色となります。いき過ぎた白の多用は、明度こそあがりますが、画面全体を灰色の集合とし、メリハリを失うもととなります。しかし白との混色を全く否定することも意味がありません。
混色自体は色をにごらせも汚くもしません。画面上の色の使い方がきれい汚いを決定します。
そもそも、混色について悩むときは、モチーフの「固有色」を再現しようとして悩む場合が多いものです。学術的な図鑑の絵では、正確な固有色の再現が必要不可欠ですが、自由な絵画表現では必ずしも実物どおりの色でなくともかまいません。また、固有色を正確に塗っただけでモチーフの表現ができるわけではないのです。ミカンの色を塗っただけではみかんの絵にはなりません。絵画を構築するのは「色彩」だけではなく、「かたち」の表現、「空間」の表現、「光」の表現、いくつかの表現要素のからみあいといえるでしょう。
描画を形と色にわけて構築していく技法があります。グリザイユとかカマイユと呼ばれる技法です。これなどは、色の呪縛から自由になるよい方法なので、この後の技法に関連したこちらでご紹介しましたので、そちらを参考になさってください。
以上はクサカベとしての三原色に近い色です。他のメーカーの色には適用できませんので、各社にお問い合わせください。
家具の場合、塗装家具ならばただちにふき取ればだいじょうぶです。油絵具ならばブラッシクリーナー液、アクリルならば水を含ませた布でふき取ります。速攻が勝負です。固まってしまった絵具を剥離剤で落とそうとすると、家具の塗装まではがしてしまいますから、いったん固まった絵具については、あきらめなければいけません。白木の家具では、絵具が固まっていなくても、もう落とすことはできません。白木の表面をうすく削るしかありません。
水彩絵具や日本画の場合には、絵具を排水として流す機会が増します。水銀化合物である朱などは環境への負荷が心配になってきます。顔料としての朱は水溶性の水銀化合物ではないので、直接の汚染にはつながりませんが、環境への排出を管理する必要のある特定物質です。筆洗に残った顔料をペーパータオルなどで濾しわけて処理すれば、排出による環境負荷を最小限にすることができます。